働き方改革?ハタラケル改革!@フットケアから始めよう

企業に足の臨時保健室を開設したところから始まった“ハタラケル改革”のストーリーです。

第19話 社内で一番落ち着く場所

久しぶりのワークショップ。

 

“足の臨時保健室”が割と込み合うようになったため、『社内で一番落ち着く場所と、そこに何があったら落ち着くか』のテーマでディスカッション。


これも、“落ち着く場所があることは良いこと”という仮の理想からのテーマ。

 

それが覆っても構わない。毎日が生き残りをかけた戦場なのに、落ち着く場所なんて・・・と考える人や企業があっても良い。

 

「やっぱり自分のデスクかな。集中した後にコーヒー飲むと落ち着く。おいしいコーヒーがあればそれでいいかな」
「女子トイレかな、世間話でストレス発散」
「作業場だな。自分の場所、持ち場って感じ。俺のテリトリー。ただし俺の作業道具は誰にも触ってほしくない」

 

相変わらず少しずれながらも、それぞれから出せるようになってきた。


課長が
「自分の車の中」
と言ったところで、みんなが笑う。

 

昼休みに1人で車内でタバコを吸っているのをみんなが知っているからだ。しかも奥さんには禁煙してることになっているというのも、最近の話題だったようで、盛り上がる。

 

「私、1階のトイレ」

 

マユちゃんがぼそっとつぶやいた。


ちょっとの沈黙。

 

ここは3階。マユちゃんがPCに向かっている部屋は3階にあり、1階は倉庫と作業場。トイレは各階にある。


なぜ1階のトイレ?

 

「1階のトイレには何があるの?」
ちょっとストレートすぎる問いだったかと思いながら答えを待つと


「3階だと、入っているときに人のうわさ話とか悪口とか聞こえて、いやな思いするから1階に行きます」


なんでも自分の責任だとか、自分が能力ないからだとか、自分を低く評価してしまうマユちゃん。他の人のうわさ話も、自分事としてとらえてしまっていたのかもしれない。

 

エリさんと、エリさんと同年代のユカリさんが顔を見合わせてくすっと笑う。このちょっとした反応さえも、マユちゃんを傷つけちゃうんだろう。

 

社内には、職員食堂もなければ休憩室もない。女子トークの名所の給湯室もなく、事務室の端っこに小さな台所がついているだけだ。

 

2つに分かれた事務室と、会議室2つ(そのうち一つに保健室はある)と、作業室。あとは応接室をかねた社長室。一つ一つの部屋は大きいが、くつろげたり、落ち着いたりできる場所はない。コーヒータイムは各自各机で。それが当たり前。

 

「別にシオダさん(マユちゃんのこと)の悪口言ったことはないわよ」
とエリさん。
「仕事できてないときは直接言ってるでしょ。陰でなんて言わないわよ」


その発言、私のせいにしないでとばかり、エリさんが話す。エリさんのPCの左上にはイライラシールが付いている。あー、マが悪い。

 

マユちゃんは反論しない。今日は萎縮気味。

 

男性職員に緊張感が見える。初めてやったワークショップでは、こんな反応なかった。みんながみんなに無関心。雰囲気が悪くなっても、無関心のままでいれば被害なしという見解。少しづつ、ほんの少しづつ関係性が変わっている気がした。ただし、この状態は完全にアイスメイキング(笑)

 

「スギタさん、何があればっていう答えにどんなものを期待してたの?」
と課長。ナイスフォロー。


「課長、出かけたときに、喫煙室で知らない人と話したり仲良くなったりなんてことないですか?」
「ああ、あるある。大事なことは喫煙室で決まるんだよ(笑)」
「そういう場所って、大事だなって思います。1人でタバコ吸ってるのに、横に誰かがいる。今、各自各机でコーヒータイムしてるけど、喫煙室効果みたいに、コーヒー飲めるスペースがあるとちょっといいかな・・・なんて思ってました」

 

想定していたプログラム通りにコトが運ぶことはまずない。アイスをとかすつもりが強固なものにしてしまうことも・・・。でも何もしないよりは、何かが動いた方が良い。仕事は続く。明日も明後日も。

 

“足の臨時保健室”の斜め向かいに、カフェスペースができたのは、それから1か月後。その会議室は完全に会議ができない会議室になった。